子供にこそみせたいが、みせられない映画。石井輝男監督の『地獄』
子供の頃、「悪い事をしたら地獄に落ちるよ!」と言われた経験はなかろうか。
私にはある。
私はどうしようもなく頭の悪い子供で、様々な悪戯をしては、母を怒らせ、父の鉄拳制裁を受けて来たのである。
すでに私の地獄行きは決まったようなものだった。
しかし子供は、地獄と言われても、ピンとはこないのだ。
正直、破天荒な父に翻弄され続けた我が家は、
その荒ぶる家庭環境の方がある意味地獄に近い。
ともあれ、現代っ子は生意気である。
我が子が小さかった頃に「嘘ついたら、地獄のエンマさんに舌を抜かれるで」と言っても「why?」顔である。
これは、子供もちびる絵本『地獄』を買いに本屋へGOせないかんとこだ。
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しかし私、もっといい教材持ってるんだけどね。
ほんとは子供も観るべきなのだろうけど、エロ・グロ・ナンセンスが、子供の視聴を阻んでいるのだ。
年齢制限はなかったような気もするが、この映画を子供にみせたい親がいるなら、そこそこ仲良くなれそうな気もする。
さて、この映画は、1999年に石井輝男監督によって作られた映画であるが、罪人たちは実際に日本を震撼させた事件の犯人たちである。
実際の犯人の名前をほんの少し変えているだけで、どの事件かはすぐにわかる。
連続幼女誘拐殺人事件を起こした男(宮島ツトム)は、地獄に堕ちた後、生きたまま全身を鋸(のこ・のこぎり)引きの刑。体をバラバラにされ、死んだかと思ったらまた復活して元通り。そして再び鋸引きの刑と、延々繰り返される。
また、宇宙真理教の教祖、笠原道明こと松本静男は、信者を洗脳したり教団を訴える被害者の会で弁護士をしていた一家を殺したり、サリン事件を起こすなど生前悪事を働いていた為、無間地獄、阿鼻叫喚地獄の八大地獄全て受ける事になり、永遠の苦しみを味わう。
これをみて、それでも悪さをしようとする子供はいないのではなかろうか。
ただそれは、小さい子供ならばという話で、小学校の高学年くらいになれば「地獄とかねぇし」といきった感じで言われてしまうのだろうな。
ただ、エロ・グロといえど作り物感が半端なく、胡散臭い上に意味のないポロリは、エロというよりギャグに近い。
そこがたまらないともいえる。
ラストの奇妙なダンスは、おっぱ〇祭りなのだろうか?
現代の子供は、簡単にネットなどでグロい映像が見られて、ゲーム内で簡単に人を殺す。
でも、それは現代っ子に限ったことではない。
私の時代は、レンタルビデオ店に並ぶグロいビデオに年齢制限などなかったし、ショッキングな映像が普通にテレビで流れることもあった。
ファミコンのアイスクライマーで、妹と協力するどころか妹のキャラを殺しまくって、コントローラーで殴り合いをしていたこともある。
子供は、純粋に「死」というものに興味を持つもので、見ちゃだめだと言われてもショッキングな映像を見たがるのだ。
ただ、必要なのは想像力である。
どんな事をすると人が苦しむか、傷つくか、悲しむか。
それがきちんと想像できる人間は、極楽に行けるのかもしれない。
相米慎二監督の映画『夏の庭 The Friends』は、子供たちの死に対する純粋な興味と、それを経験することで成長していく子供たちを描いた素晴らしい映画である。
いつかこのブログでも、書きたい作品だ。