私には、怖い映画がある。
それは、ロブ・ライナー監督の名作『スタンド・バイ・ミー』である。
何処が怖いの?と思うだろうが、時間の流れが怖いのである。
彼らはキラキラした青春を謳歌しつつも、当然時間の流れに逆らえない。
この映画は大人になった主人公ゴーディの回顧録であり、戻らない時間に対して喪失感の中で語られ進められていくから怖いのだ。
映画では、四人組の一人であるクリス(演:リバー・フェニックス)は、弁護士になり自分の正義感が災いして死ぬ。
しかしスティーヴン・キングの原作では、ゴーディ以外の仲間はみんな若くして死んでいる。
つまり四人の中で、歳をとることができたのは、(原作では)ゴーディだけなのである。
(映画の中では、3人大人になれたが)
大人になったゴーディが語った「12歳の頃のような友達は、二度とできることはない」というセリフが、異常に恐ろしく感じたのだ。
前置きが長くなってしまったが、『夏の庭 The Friends』(1994年/監督:相米慎二)は、小学6年生の少年3人が、近所に住む一人暮らしのおじいさんの死を目撃しようと観察を始めたが、ひょんなことでおじいさんと話したり、おじいさんの手伝いをするようになる。
おじいさんに戦争の話を聞いたりと交流するうちに、いつの間にかおじいさんと少年たちの間に妙な絆ができているのだ。
そして彼らは、大切な人となったおじいさんの死を経験する。
あれだけ死と言うものに興味を持っていたのに、いざ味わうと少年たちは悲しくてたまらなかったのである。
子供は純粋に死に興味を持つ。
これは成長する上で必要なことで、不謹慎なことではなくごく自然な事のように思う。
この歳になると、死を経験することが多い。
数年前に友人を肺がんで亡くしたが、通夜の時に「嗚呼、人は死ぬんだな」と当たり前のことを思った。
身近な人は死なないと思い込んでいる自分がいたのだ。
失ってから、この人の事が大切だったんだなぁって気づく。
その人が大切だなんて事は、当たり前のこと過ぎて普段忘れてしまっているのだ。
人が亡くなると、何故だかこの映画を思い出す。
この映画は美しい。
映像もだが、人の死によって痛みや悲しみを知った子供たちの成長が本当に美しいのだ。