ブコウスキーへの憧れ 映画『酔いどれ詩人になるまえに』
私は、いい加減でダメな人間ではあるものの、完全なダメ人間になりきれない中途半端なダメ人間である。
だからチャールズ・ブコウスキーの小説『勝手に生きろ!』に出てくる主人公のチナスキーの生き様に、若干の憧れを抱くのだ。
この小説を映画化したのが、ベント・ハーメル監督の2005年の映画『酔いどれ詩人になるまえに』である。主人公のチナスキー(演:マット・ディロン)は、住所不定・酒浸りのヒモ男である。
しかしながら詩人としての才能と、人間としての魅力がある。
家族を蔑ろにしても、自分を貫く落ち目のレスラーを描いた2008年の映画『レスラー』のランディ(演:ミッキー・ローク)しかり、売れないシンガーソングライターの放浪記を描いた2013年の映画『インサイド・ルーウィン・デイヴィス名もなき男の歌』の主人公ルーウィン(演:オスカー・アイザック)のクズっぷりと言い、なんだか羨ましいのだ。
多分それは、自分に正直だから羨ましいのだ。
そして、失ったものを数えたりしない生き方がかっこよく思えるのだ。
私は一々ウジウジ考える。
何かを得る為には、何かを失わなければならない時もある。
私は、それができないのだ。何も失いたくはない。覚悟がないのだ。
もしかしたら失ってでも得たいものがないのかもしれない。
彼らは失ってでも得たいものがあるのだ。
その生きざまがぐっとくる。
『レスラー』
『インサイド・ルーウィン・デイヴィス名もなき男の歌』
『酔いどれ詩人になるまえに』の中で、チナスキーがラストで残した言葉がある。
ずっと私の心に残っているのだ。
このチナスキーの言葉は、原作者であるブコウスキーの詩『Roll the Dice』が使われている。
「孤独は贈り物だ」と言えるような人間になりたいのだ。